詩人
谷川俊太郎の詩をよく読んでいた。
ひらがなだけで書かれた詩が好きで、自分でも書いていた。
20代から30代のころ。
仕事もせず外にも行かず誰とも話さず、一日中詩を書くために時間を使った。
雑誌に投稿し、掲載されると嬉しかった。
詩集を出すのが夢だった。
あのころの自分の詩を読み返すと、いまの自分よりずっと自分らしい自分がいて、仕事なんかやめて詩人に戻りたいとさえ思ってしまう。
あのころ、詩を書くことでしか、自分が生きているということを確かめられなかった。
いまは違う。
仕事をしているとき、嫌でも生きているんだと実感してしまう。その実感が詩への距離を遠ざける。もはや、詩を書く理由がない。
だけど、かつて詩人だった自分が、自分の詩を読みたがる。自分の本当の声を聞きたがる。
次に大きな不幸が訪れて、また孤独になったとき、自分は詩人に戻るのかも知れない。
そのときが訪れる前にこの世を去りたい。